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ブレンゴIDPキャンプにて、鎌状赤血球症の子供のスクリーニング調査を実施

 病院開業以来の複数回のキャンプ視察を経て見えてきたことは、キャンプでは慢性疾患に対する受け皿がなく、支援の手が回らずに放置されたままになっているという実態でした。風邪や下痢やマラリアなどの疾患を治療したり、妊婦健診・分娩のできるモバイルクリニックがあるとはいえ、その質や量が十分であるわけではありませんが、MABADILIKOは慢性疾患の中でも、とりわけサブサハラ地域に特有の鎌状赤血球症(SCD)に焦点を当てて活動しています。


 キャンプにおいて、慢性疾患(SCD)に対する治療・フォローが行われておらず、更に住民やキャンプの責任者などにヒアリングを行った結果、SCDが疑われる疾患によって少なくない子供の命が失われていることが分かりました。

 並行して、ゴマ市内でもSCDの現状調査をするうち、北キヴ州保健省・鎌状赤血球症責任者の小児科医Dr.Fezaとのご縁があり、以来、共働関係にあります。そして、このたび2024年10月、ブレンゴIDP(国内避難民)キャンプにてSCDのスクリーニング調査を行いました。



 ※参考データ:Goma市内にある北キヴ州立病院の小児科にて、2023年7月1日~2024年4月31日の期間に集められたデータによると、5歳未満の小児における全体的なSCDの発生頻度は2.4%(56例)で、女性の割合が57.1%で性比は1.33。また、ナンデ族が33.3%と最多であった。受診理由は発熱が85.7%、次いで腹痛が59.8%であった。


 これまでDRC国内において、大規模なスクリーニング調査が行われたことは殆どありませんが、統計では、毎年2%の新生児が鎌状赤血球症に罹患して生まれているとされており、病院のデータからも示されるように、キャンプにおいても2%の子どもががSCDに罹患していることが推測されました。以下、スクリーニング(10月12・14日の二日間)の様子です。



 初日・二日目共に、キャンプ内の人々にスクリーニング検査の実施を周知するべく、一戸ずつテントを訪ねて回りました。貧血が症例を疑う一番の症状であるため「一年間に2回以上の輸血歴のある子どもがいれば検査を受けてください」と伝えます。



 両日合わせて、200人あまりの子ども達の検査を実施し、今回の調査では4名の陽性者(罹患者)を見つけ出すことが出来ました。



 検査を受けなければ、その子供は鎌状赤血球症に罹患しているという事実を知ることはありませんし、適切な治療を受けることも出来ません。今回見つかった4名の子どもは氷山の一角に過ぎません。キャンプではSCDの子供が、何の疾患に罹っているのか分からないまま命を落としているのです。

 

 現状はまだプロジェクト運営の資金がなく、罹患している子供を見つけ出すことができたとしても、これ以上は治療・フォローしていくことが難しい状況であるため、当面、本プロジェクトはこの4人の子供のケアを行っていきます。


 

 キャンプ内を歩き回り、劣悪な生活の様子を目の当たりにしながら、着のみ着のまま紛争から逃れてきたものの、仕事や娯楽もなく、まるで「望まれない集団を収容」するかのような環境で数か月・数年を過ごさなければならない彼らの苦しみ、やるせなさを改めて想像すると、いたたまれない気持ちになりました。



「紛争から逃れられて良かった、支援のあるキャンプに着いたらもう大丈夫」キャンプについてそんなイメージがあれば、それが全くの見当違いであることは明らかです。先行きも見えず、行く当てもなく、もし自分がここで生活しなければならなくなったら…と考えると、抜け殻のように無気力になるか、自暴自棄になってしまうのではないかと思います。唐突に表れた私の姿が、彼らの目にどのように映っていたのか。快く挨拶を返してくれる人々の目の奥には、とてつもない悲しみや怒りや悔しさがあったに違いないと、振り返らざるを得ません。



 なぜ、彼らは住んでいた場所を追われ、キャンプで生活することを余儀なくされているのでしょうか。本来であれば国を潤すはずの豊かな天然資源ですが、私たちの使うパソコンやスマホに入っている部品の原料であるレアメタルが、残念ながら長年にわたるDRCの紛争の素因となっています。


 ルワンダによって組成されたM23などの武装勢力が鉱山に入り、鉱物を独占するためにその地域の住民を暴力で支配したり排除したりすることが紛争の大要です。そして意図せずとも、そこで産出された鉱物を私たちは消費しているのです。

 ピカピカの美しいスマホの外観からは、何百万人ものコンゴ人が犠牲になっているという直視し難い真実は知る由もないのですが、反社会勢力にお金が渡らないような仕組みを作らない限り、私たちが消費者としての行動を変えない限り、避難民は増え続け、キャンプがなくなることはないのです。

 

 そう考えると、MABADILIKOをはじめとした国際NGOの行動は決して「支援」などであるはずがありません。紛争鉱物を原料にした製品の取り引きによって莫大な恩恵を受けた先進国が、その紛争に加担してしまったことを自覚し、問題の解決に向き合うことに「国際協力」という名前が付くことにはどこか違和感を覚えます。



 また、キャンプの入口やそこかしこには「支援」資金を拠出する国や団体を明示する大きな看板が立っています。「私達は人道支援に取り組んでいます」という宣伝の思惑は理解できますが、そもそも、なぜこのような世界最大の人道危機が起こっているのか?ということについて、国際世論はどれくらい熟慮することが出来ているのか。現場で目にする「援助」のスタンスから窺い知るに、疑問を抱かずにはおれません。

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